Workshop A「カリキュラムの国際化と国際共修について実践しながら学ぶ」

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末松和子(東北大学高度教養教育 学生支援機構 教授)
北出慶子(立命館大学文学部 教授)
米澤由香子(東北大学国際連携推進機構 准教授)
水松巳奈 (東北大学高度教養教育 学生支援機構 助教)

講師感想

 27日に開催されたワークショップAは、近年多くの大学で展開されている留学生と国内学生が共に学ぶ環境をデザインする「国際共修」をテーマとしました。ファシリテーターは東北大学から末松和子さん、米澤由香子さん、水松巳奈さん、立命館大学から北出慶子さんの4名です。参加者は約40名でした。
 本ワークショップは6時間で4つのフェイズを体験し、最終成果としてグループ単位でシラバスを作成するグループワークを行うという構成です。
 グループごとにアイスブレイクをした後、フェイズ1では授業を計画する際に気を付けるポイントについて、ADDIEモデルを用いた説明があった後、さっそくグループごとに指定されたケースを基に授業計画のポイントを話し合いました。
 フェイズ2では、国際共修における学生の学びを深めるために、平均的に15回で構成される1科目の授業計画の適切なタイミングで国際共修の肝となる教員の教育的介入をどのように取り入れるべきかということを、オーストラリアで開発されたFinding Common Groundのフレームワークを用いて解説し、実際にグループワークでポイントを確認しました。
 フェイズ3では、国際共修を活用した授業や課外活動で遭遇する様々な「難しい局面(difficult issues)」について掘り下げました。文化的違いによって情報の捉えられ方やコミュニケーションの取り方は大きく異なることがあります。例えば、日本の大学ではそれほど問題にならないような年齢や性別などの学生情報は、国際共修授業・活動ではそれが運営に決定的に重要でない限り、共有することを一考する必要があります。あるいは、常に変動する政治情勢が教室内の学生間コミュニケーションに影響を与えることもあります。こうした難しい場面での教職員の取るべき対応や態度がディスカッションの話題となりました。
 フェイズ4では、国際共修場面でしばしば議論される「評価」について取り上げました。国際共修では、学生のパフォーマンスを最終的に成績付けする評価としての “evaluation”のみでなく、学生の学びにおける成長度合いを可視化する評価としての “assessment”の側面もあります。ワークショップでは特に後者の評価について取り上げ、学生が学びを深めるための評価として、形成的評価や自己内省型評価も組み合わせた評価システムを、科目の目的や学習目標と関連づけて計画することの必要性について確認しました。
 全体に盛りだくさんの内容だったワークショップAでは、6時間の長丁場ながら参加者間の対話が途切れませんでした。参加者の一人からいただいたコメントは以下の通りです。


受講者感想
山崎真伸(昭和女子大学国際交流センター(CIE))

 本学では、留学生と日本人学生がともに英語で学び合う3週間の短期プログラムを、2013年度から毎年実施しています。最初は国際共修ということばも知らずに行っていましたが、多様な文化の違いを超えて学生同士が一体となり、だんだんと意識や表情が変わっていく姿を見ているうちに、何がこのような作用を生んでいるのか知りたくなり、今回のワークショップに参加しました。
 実際に参加してみて、国際共修の難しさと面白さの両方を感じることができました。単に異文化間の学生が一緒になれば自然と学びが生まれるわけではない。そのこと自体は分かっていたつもりでしたが、先生方や参加者の皆さんのお話を聞いて、ここまで多くのことに気を配らなければいけないのかと驚くことも多々ありました。
 ワークショップの内容は、理論の紹介から始まり、学習者の深い学びを促進するための環境やフレームワークの理解、実践のための課題、評価方法など、非常に幅が広いという印象です。また先生方の講義もさることながら、実践的なグループワークが随所に盛り込まれ、6時間という長丁場にも関わらず、とても短く感じられました。充実した学びの時間だったと思います。
 また、一番印象に残ったのは、参加したみなさんの意識の高さです。経験豊富な方が多く、グループワークを通じて、実践的かつポイントを押さえた意見をたくさん聞くことができました。最終課題であるシラバスの作成の段階では、メンバー間も気兼ねなく意見が言えるようになって、さながらこのワークショップ自体が、年齢、性別、職種の異なるメンバーによる異文化共修のようでした。
 このように非常に充実したワークショップでしたが、内容が幅広いこともあり、もっと時間がほしかったという気持ちもあります。ただ、限られた時間の中で最大限学びの機会を与えて下さった末松先生をはじめとする講師の方々と参加者の皆さんにはとても感謝しています。ワークショップの成果を本学の国際共修プログラムに還元するとともに、参加者の皆さんと培ったネットワークをもとにこれからも学びを深めていきたいという気持ちになりました。このような機会を与えていただき、どうもありがとうございました。


Workshop A: Designing Curriculum Internationalization and Intercultural Collaborative Learning through Practice

Kazuko SUEMATSU ( Professor, Tohoku University )
Keiko KITADE ( Professor, Ritsumeikan University )
Yukako YONEZAWA ( Associate Professor, Tohoku University )
Mina MIZUMATSU ( Assistant Professor, Tohoku University )

Facilitator’s Impressions & Comments from a Participant
Yukako YONEZAWA ( Tohoku University )

Four facilitators from the inter-university research team on intercultural collaborative learning worked with about 40 participants in this workshop on designing curriculum internationalization.

The workshop consisted of four phases which covered a broad range of topics on intercultural collaborative learning. The first phase utilized the ADDIE model to support planning courses with international collaborative learning. The second phase focused on intentional educational intervention to students’ learning by using the teaching framework “Finding Common Ground”, which was established by an Australian research team. Phase three treated difficult issues which teachers often face in their class management. While cultural, political and religious differences are important learning resources in intercultural collaborative study, teaching staff should be mindful about managing these differences so that they do not cause negative (and harmful) effects for the learning community. Phase four discussed the assessment of learning in intercultural collaborative learning classes by comparing differences in evaluation and assessment.

All phases encouraged the participants to be proactive by combining lecture and group work. Mr. Masanobu Yamazaki, a participant from Showa Women’s University, let us know his thoughts on the workshop and said that “the sessions themselves were like intercultural collaboration because the participating members were different in their ages, career paths and in the organizational cultures they came from. I felt six hours was too short to learn the whole content. I want to apply what I learned to my practice and make good use of the network of people I gained through the workshop”.