大学発行の証明書とそのデジタル化のアンケート調査結果

一般社団法人国際教育研究コンソーシアム(RECSIE)では、2020年9月4日から13日にかけ、新卒採用を行う企業を対象にした「大学発行の証明書とそのデジタル化」についてのアンケート調査を実施しました。

アンケート調査の回答企業はメーカーやサービス関連、流通業が大多数を占め、従業員規模は以下の通りの内訳となっております。回答企業数は79社です。

社員採用にあたっての現在の証明書提出方法

現在、「応募者が大学から取り寄せた紙の証明書を郵送または直接提出してもらっている」と答えた企業は91%にも及びましたが、電子的な方法での証明書を現状で受け付けている企業も16.5%にのぼっていました。

これまで紙の証明書のみを受け付けていた企業でも、コロナウイルス の影響で学生が大学に行くことが困難になったがゆえに、P D Fでの成績証明書の提出を許可する傾向が見られるようになりました。

「例年は最終面接時に持参して提出させているが、大学に立ち入れず証明書が取れない学生が多かったため、後日pdfでの提出を許可した。全体の30-40%程度がpdf提出だった。」(従業員数1000名以上企業)

「電子メールにてPDFファイル等の電子データを添付いただいている。2020年より、コロナ禍の対応で急遽行った。」(従業員数500名以上企業)

応募者または大学がメールなどで提出することを可能にしている企業は全体の16%でした。メールでの提出以外では、オンラインの応募フォームを活用した証明書の受付をするケースも5000人以上の従業員規模の企業から報告を受けています。

大学発行の証明書のデジタル化に対する印象

紙での証明書の受付が一般的である一方で、大学が証明書をデジタル化した際には、企業においてもデジタル証明書を受け付けることに肯定的な企業が圧倒的多数を占めました。

また、現時点でもデジタル化に対応が可能であると答えた企業は全体の77%でした。

以下のコメントのように、相対的に証明書のデジタル化はポジティブなものだと捉える企業は多いことがわかりました。

「弊社ではコロナ禍以前から、スキャンデータでの提出を推奨していたので、ぜひこのタイミングで全面デジタル化に なるとありがたい。社内での情報管理もすべてデジタルのため、紙での郵送はこちらの工数も増え、また現在は全面 在宅勤務中という状況もあり、紙のメリットは全く感じていない。」(従業員数1000名以上企業)

「紙ベースでの管理は、保存場所などの問題があるなどするし、特にデータで不都合はないので、デジタル化を是非勧めてほしい。」(従業員数1000名以上企業)

現時点で対応が難しいと答えた企業は、全体の3.8%と少数派でした。これらの企業からは以下のようなコメントが寄せられました。

「応募者管理システムにてデジタル証明書の登録(受付)専用フォームの作成が必要」(従業員数1000名以上企業)

「証明書の受け側で、どのようなシステムが必要かリサーチから始めるため、期間は未定」(従業員数1000名以上企業)

このようにすぐにデジタル化に移行が厳しい場合でも、前向きに検討していきたいというご意見をいただきました。また、現在RECSIEで推進している学修歴証明書デジタル化(詳細:http://recsie.or.jp/news/2353)では、受理機関でのシステム対応が必要ないプラットフォームを採用しているため、こうした懸念をもつ企業でも負担のないスムーズな導入が可能です。

しかしデジタル化を行っていくにあたり、個人情報の取り扱いを懸念する声も多くみられました。

「ペーパーレスで管理ができることは非常に望ましいが、書類のデジタル管理となると社内の個人情報管理システムそのものを見直す必要があり、実際の導入には時間を要する。」(従業員数1000名以上企業)

「個人情報保護政策の徹底が大前提となる。」(従業員数500名以上企業)

この点に関しても、RECSIEで推進している学修歴証明書デジタル化のプラットフォームでは、日本の個人情報保護法と欧州の一般データ保護規則に厳密に準拠しており、こうした懸念も解消されるソリューションとなっています。

オンラインによる大学卒業証明書など学修歴証明書発行サービス 「オンライン学修歴証明ネットワーク」を開始します

一般社団法人国際教育研究コンソーシアム(RECSIE)はアイルランド、ダブリンに本拠をおくDigitary社と提携し、大学の卒業証明書などの学修歴証明書をデジタル化し、オンライン上で発行する「オンライン学修歴証明ネットワーク」のサービス提供を開始します。

本日、一般社団法人国際教育研究コンソーシアム(RECSIE)は、日本の大等の教育機関がデジタル証明書を発行するオンライン・サービスを構築するため、グローバルな教育IT企業であるDigitary社(本社:アイルランド、ダブリン)と業務提携したことを発表します。

RECSIEとDigitary社は、本年9月よりオンラインによるデジタル学修歴証明書の実証実験を開始し、2021年の本格運用を目指します。この取り組みにより、学生の就職活動や海外留学などで必要とされる大学の卒業証明などの学修歴証明書を、オンライン上で取得し、証明書および検証のためのリンクURLを提出先に送付するという、日本で初めてとなるデジタルソリューションプラットフォームを提供します。

このシステムの運用により、いつでも、世界中のどこからでもパソコンやタブレット端末、スマホを使ってオンラインでデジタル認証された卒業証明書や成績証明書にアクセスでき、日本国内のみならず海外の留学先や就職先にも、検証可能な公式証明書として送付することができるようになります。

Digitary社はアイルランドで設立され、2005年の設立以来、セキュアなオンライン証明書サービスシステムのエキスパートとして世界中で飛躍的な成長を遂げてきました。アイルランド、イギリス、イタリア、オーストラリア、インド、カナダにオフィスを構え、日本をはじめ世界各国に広がる利用者に信頼性の高いデジタルソリューションを提供しています。

東洋大学教授でRECSIE理事である芦沢真五は、「Digitary社との提携による本事業の展開は、日本の学習者、高等教育機関、企業にとって非常にエキサイティングなニュースです。アジア太平洋地域における学生流動性を目指すユネスコのUMAP事業や、教育資格の国際間相互認証を求める『東京規約』の実施プロセスにも、強い影響を与えることになります。」と語っています。

「デジタル化認証された成績証明書など、学修歴証明書や資格証明書をオンラインで提供するオンラインプラットフォームの全国的ネットワークを構築します」と語るのは、未来工学研究所の主席研究員であり、RECSIE理事で本プログラムを指揮してきた中崎孝一です。「全世界の学修歴証明書プラットフォームの6か月にわたる国際調査の結果として、国際性、先進性、日本の高等教育機関にとっての適合性などの点に優れたDigitary社を日本のオンライン学修歴証明書ネットワークのプラットフォーム・パートナーとして選定しました。」

Digitary社のCEOであるアンディ・ダウリングは「当社が、日本のオンライン学修歴証明システムを構築するサポート企業として選定され光栄です。Digitary社のビジョンとユニークな経験を日本で生かせることを非常に楽しみにしています。当社の実績と技術により、当社プラットフォームは何百万人もの学習者に検証可能なデジタル認証証明書として利用されており、オーストラリア、カナダ、ヨーロッパ、インド、ニュージーランド、米国の何百もの高等教育機関に採用されています。」と述べています。

アジア学生文化協会理事長でRECSIE理事の白石勝己は、「このサービスは、日本で学ぶ留学生にとっても朗報であり、海外における日本の資格証明書の信頼性の向上にもなります。」と述べています。また、一橋大学教授でRECSIE理事の太田浩は、この取り組みを「日本の高等教育機関にとって、大きな転換点となるでしょう。」と評しています。

オンライン学修証明ネットワークの特徴
 日本語、英語によるサービスとサポート
 学習者は24時間いつでも、世界中どこからでも、自分のパソコン、タブレット、スマートフォンからネットワークにアクセス可能です。
 学習者に、セキュアなデジタル形式で、検証された公式な成績証明書、資格証明書、その他の証明書へアクセスし、閲覧し、提出先と共有することができるようになります。
 日本の高等教育機関は、デジタル文書やデータを自主的に管理設定し、ブランド価値を維持しながら、学生や卒業生のために効率的で生産的なサービスとして提供できます。
 日本の高等教育機関は、セキュアなグローバルネットワークを通じて、国内外の学生からの証明書発行依頼を自動化処理することができます。
 日本の高等教育機関が、学歴ポートフォリオ、マイクロクレデンシャル、MOOC等のポストCOVID19の先進的な高等教育ビジネスモデルを実現できるようになります。

RECSIEについて
RECSIEは2014年1月に設立された非営利団体で、高等教育の国際化に貢献し、個々の大学の枠を超えた研究課題の取組みを推進することを目的としています。RECSIEの主な目的は、学生の移動性を高めるために世界中の大学と協力し、文化的多様性を通して学生の才能を伸ばすことにあります。RECSIEは、2020年初めに日本で初めてフローニンゲン宣言ネットワークに参加し、日本の高等教育機関の証明書類のデジタル化に取り組んでいます。

Digitary社について
Digitary社は2005年にアイルランドのダブリンで設立され、学修歴証明書の認証、共有、検証のための主要なオンラインプラットフォームサービス会社に成長しました。設立当初から学習者中心に考えられたシステムは、何百万人もの学習者がオンラインで安全かつ迅速かつ簡単に、検証された学修歴証明書を共有することを可能にしています。Digitary社は現在135カ国以上の組織で利用されています。