2021/1/23公開研究会「定住外国人受入れと社会基盤」のご報告

2021年1月23日(土)に公開研究会「定住外国人受入れと社会基盤」を開催いたしました。当日は、ムンドデアレグリア(日系ブラジル・ペルー人学校)から松本雅美校長、NPO法人WELgeeから代表理事の渡部カンコロンゴ清花氏、独立行政法人国際協力機構(JICA)から上級審議役の宍戸 健一氏、センチュリー法律事務所から杉田昌平弁護士をゲストにお迎えし、340名に登録いただき、220名にご参加いただきました。

公開研究会「定住外国人受入れと社会基盤」
【日時】  2021年1月23日(土) 13:30~16:00  Webinar配信
【司会】鈴木崇弘(城西国際大学大学院研究科長、特任教授)

【主催者趣旨説明】
芦沢真五(東洋大学国際学部教授)
主催者を代表して芦沢より、労働力が不足する日本で外国人労働力への期待が高まる一方で、日本国内では外国人材の受入れに必要なインフラが未整備である点を指摘しました。海外での職歴や学歴のある外国人材に能力を発揮してもらうために、外国からの学歴・資格を認証するシステム(FCE)が確立すべきこと、ユネスコによる東京規約を基盤として外国学歴を適切に認証すること、さらに電子的に資格認証されるような体制を確立していくことが必要であると問題提起しました。
発表資料:定住外国人受入れと社会基盤

1. 松本雅美(ムンドデアレグリア(日系ブラジル・ペルー人学校)校長)
「外国人学校の現場から見えてくるもの―多文化共生のヒントー」
発表資料:外国人学校の現場から見えてくるものー多文化共生のヒントー
発表資料:ムンド・デ・アレグリア学校
浜松にある日系ブラジル人・ペルー人学校の松本校長は、労働力として日本に招かれた日系南米人の子供たちが日本の教育システムから疎外されてきたこと、この矛盾を少しでも解消するために学校を設立し、日本にある外国人学校として日本の学校の良いところを取り入れ、日本語教育も含めた「ムンド式の統合政策」にチャレンジしていることを説明されました。日本の社会が生活者である外国人に門戸を広げ、教育へ投資することの必要性を訴えました。

2. 渡部カンコロンゴ 清花(NPO法人WELgee 代表理事)
「外国人材としてのキャリアパスは、難民認定の代替案になり得るか?」
発表資料:外国人材としてのキャリアパスは、難民認定の代替案になり得るか?
 難民在留資格を申請中の若者たちに、日本での就職先をマッチングするためのNPO法人を立ち上げた渡部さんは、その取り組み経緯と今後の課題を報告されました。日本における難民申請が15000件を超えたにもかかわらず44件しか認定されていない(2019年)現状、日本社会が「難民」という言葉に対する偏見を取り払う必要などについて語られました。そして彼らの能力や経験を活かして、キャリア形成ができるような社会を作っていくことの意義を訴えられました。同時に、実際に企業とマッチングによって成果を上げている事例や企業関係者の声も紹介されました。

3.宍戸 健一(JICA上級審議役)
「JICAの外国人材受入れの取り組みと『責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム』」
発表資料:JICAの外国人材受入支援について

 宍戸さんからは、外国人材の受入れにおいて、「来日前」「滞在中」「帰国後」などのステージに分けて、どのような取り組み課題があるかを分析し、JICAがこれまで取り組んできた事業、今後の方向性について報告がなされました。また、2020年11月に発足した「「責任ある外国人労働者受け入れプラットフォーム」(JP-MIRAI)の概要と取り組みを紹介されました。日本国内の民間企業・自治体・NPO・学識者・弁護士などの立場の異なるステークホルダーをつないで、外国人労働者の受入れ環境とインフラを整備し、外国人材から「選ばれる国」となることを目標とされています。

4.杉田昌平弁護士(センチュリー法律事務所)
「外国人雇用制度から見た学歴・資格情報」
発表資料:外国人雇用制度から見た学歴・資格情報
 杉田弁護士からは、日本における在留資格の実情を分析し、メンバーシップ型雇用が定着している日本において、在留資格を職務に限定的に規定している現状の法体系に大きな矛盾があることが指摘されました。また、日本国内の資格基準が国際的でない中で、在留資格に紐づく資格の問題をどのように制度設計において取り入れていくことができるのか、といった問題提起もおこなわれました。

【パネル】
その後おこなわれたパネル・ディスカッションでは、①外国人材のキャリアを後押しするために何をなしうるか、②「日本人」対「外国人」という硬直型の社会構造(何十年住んでも、第二世代や第三世代になっても「外国人は外国人」と固定されている)をどう変えるか、③日本も二重国籍を認めるべきではないか(外国人材にも参政権を得る道があるべきでは?)④海外で主流のジョブ型雇用と日本のメンバーシップ型雇用をどう現実の外国人雇用で適合させるか、⑤資格基準・技能実習の在り方を見直すべき。また、外国人材にも生涯学習へのアクセスを開くべきではないか(日本版NQFの必要性)、⑥省庁の壁をとりはらって、移民のための総合的な政策を開始すべき、などの意見が出されました。

主催:東洋大学国際学部芦沢真五研究室
協力:一般社団法人 国際教育研究コンソーシアム(RECSIE)

【当日の様子】

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